ジオフェンシングとは
ジオフェンシングとは、地図上に任意のエリア(円・多角形など)を指定し、そこに「仮想的な境界線(ジオフェンス)」を設定することで、スマートフォンなどの位置情報をもとに、人や車両がそのエリアに入った、出た、あるいは一定時間滞在した行動をデジタル的に検知する技術です。
これにより、来店者数・滞在時間・再来店率・通行量などの人流データを正確に計測・分析できるようになります。店舗や商業施設、イベント会場、街区単位など、自由な範囲でフェンスを設定できるため、マーケティングやエリア分析に欠かせない仕組みです。
また、現実の位置情報はGPS、Wi-Fi、Bluetooth(BLE)、アプリ内ロケーションなど複数の技術が組み合わさって取得されます。これらを統合することで、屋外・屋内それぞれの状況に応じた精度で、人の流れを立体的に把握できるようになります。
- 指定エリアへ「入った・出た」を自動検知
- 特定エリアの来訪人数・滞在傾向の把握
- エリア到達をトリガーにした通知・クーポン配信
- 商圏分析や競合店舗分析の精度向上
- 物流・勤怠・資産管理への応用
位置情報マーケティングや人流分析の基盤技術として、近年急速に活用が広がっています
ジオフェンスとジオフェンシングの違い
ジオフェンシングを正しく理解するためには、基盤となる「ジオフェンス」との関係を区別して捉えるとわかりやすいと思います。
たとえば、店舗や施設、イベント会場などを円形や多角形で囲んで定義した境界がジオフェンスであり、その境界を基準に「エリアに入った」「出た」「一定時間滞在した」という行動を判定する動作や技術がジオフェンシングです。両者は密接に関連していますが、
- ジオフェンス=場所を定義する“名詞”
- ジオフェンシング=検知・分析する“動作・技術”
という役割の違いがあります。ジオフェンスに関する解説は(→ ジオフェンスの用語集ページ)にまとめていますので、併せてご覧ください。

ジオフェンシングの仕組み
それでは、ジオフェンシングの仕組みについて説明していきます。ジオフェンシングは、複数の位置情報技術の組み合わせによって成立しています。以下に代表的なものをあげてみます。
1. GPS
もっとも広く利用されている位置測位技術で、屋外で高い精度を発揮します。特に、店舗やイベント会場など広い範囲に設置したジオフェンスへの「来訪」「退出」を把握するのに適しています。
2. Wi-Fi / Bluetooth(BLE)
GPSの電波が遮られやすい屋内施設や商業ビル・地下街などで活用されます。
・BLEビーコン :数メートル単位で精細に位置を把握
・Wi-Fi :大型の商業施設内の動線推定に有効
Wi-FiアクセスポイントやBLEビーコンを使うことで、比較的細かな位置推定が可能になり、商業施設内での滞在エリア分析などにも応用できます。
3. アプリ等を通じたイベント検知
屋外ではGPSが中心になり、広域での来訪検知に強みを持ちます。一方、屋内や地下街のようにGPSが弱い環境では、Wi-FiアクセスポイントやBluetooth(BLE)による位置推定が活用され、端末がジオフェンスに触れたタイミングで“イベント”として検知します。
これらを総合的に利用することで、屋内外を問わず安定した計測が可能になります。
ただし、技術の特性上、位置情報には一定の誤差や取得頻度のばらつきも存在します。そのため、位置情報には電波状況や端末状態などによって誤差やデータの抜けが生じることもありますので注意が必要です。
こうした現実のデータの揺らぎは、AIで補正し数十メートルから数百メートルほどの四方のグリッド単位で欠損を補う距離バイアス補完や人口統計を組み合わせた拡大推計など、信頼性を高める処理を行っていたりしています。
■ 技術の使い分け
- 屋外 → GPS中心
- 屋内 → Wi-Fi/BLE
- 消費電力・精度・エリア規模により最適な組み合わせを選ぶことが重要
人流分析におけるジオフェンシングの役割
ジオフェンシングは、取得された膨大な位置データの中から「特定エリア内にいる人の動き」を精度高く抽出・分析する技術です。
クロスロケーションズが提供する Location AI Platform®(LAP)では、単なる入退場検知に留まらず、居住地推定、性年代推定、時間帯別の滞在傾向、通行人除外など、分析の深度を高める独自AI技術(Location Engine™)を組み合わせています。
ジオフェンスの分析例
- 10m四方の細かなグリッド×AI補正による精密な「来訪者の把握」
- 夜間・昼間滞在の推定アルゴリズムによる「居住地・勤務地の推定」
- AIが自動で推計し偏りを補正した「訪問者数」算出
- 特定POI(店舗・施設)への来訪者をピンポイントに可視化
上記のように単なる境界設定(ジオフェンス)だけでは捉えられない「来訪目的」「属性」「滞在傾向」といった深い人流分析を可能にしています。そのため、「来訪したかどうか」だけではなく、“どのような人が、どこから来て、どれくらい滞在し、再来訪はどうか” といった事業判断に直結するインサイトを得ることが可能です。
ジオフェンシングのビジネス活用
ジオフェンシングは、小売・外食、観光、都市開発、広告、物流など幅広い領域で活用されています。
■ 小売・外食
店舗周辺の人流量や来訪者属性、滞在時間を把握し、商圏や店舗ポテンシャルの評価に役立ちます。
既存店・競合店の比較にも応用でき、出店戦略の基礎データになります。
■ 観光・イベント
特定エリア内の滞在状況や移動ルートが分かるため、混雑対策や回遊性向上の施策に活かせます。
イベント時の流入・流出の変化も可視化され、次回の運営改善にも貢献します。
■ 広告・マーケティング
ジオフェンスに入った瞬間をトリガーにクーポンを配信するなど、リアルタイム施策が可能です。
また、来店による効果測定は位置情報広告の根幹となります。クロスロケーションズでは、推定居住地・行動履歴と掛け合わせた精緻なターゲティング広告(Location Marketing Service)も提供しています。
■ 物流・勤怠管理
配送車両が指定エリアに出入りしたタイミングを自動把握でき、業務管理の効率化に役立ちます。
また、オフィス内のみで打刻できる勤怠管理にも利用されています。

ジオフェンシングと関連用語の違い
ジオフェンシングは、位置情報や来訪データを活用するための技術であり、GPSや位置情報マーケティングなど関連技術とは役割が異なります。
GPSはあくまで位置情報を取得するための技術であり、ジオフェンシングはその位置情報を「エリア基準」で整理する枠組みです。
また、位置情報マーケティングやジオターゲティング広告は、ジオフェンシングで得られる来訪情報を含めつつ、行動履歴や属性データまで統合して活用するより広い概念です。
クロスロケーションズでは、POI(分析地点)をピンポイントに指定でき、ジオフェンスに近い精度で店舗単位の来訪を分析できます。メッシュ型分析では捉えにくい“小さなエリアの来訪”を評価できる点は大きな特徴です。
プライバシーとデータ保護
ジオフェンシングをはじめとする位置情報技術を活用する際には、プライバシー保護が不可欠です。
- 位置情報の匿名化・統計化
- 個人を特定しない独自ID化プロセス
- 利用許諾を得た位置情報データのみを活用
- 個人情報保護委員会のガイドライン準拠
上記を徹底し、利用者の安心を確保しながら、企業が実世界のデータを安全に活用できる仕組みを整えることが重要です。
まとめ
ジオフェンシングは、特定エリアへの入退場や滞在を捉える位置情報技術であり、人流分析やマーケティングの基盤となる重要な仕組みです。
クロスロケーションズは、この技術を高度化し、誰でも活用できる形で人流データを提供するロケーションテックのリーディングカンパニーとして、小売・観光・自治体・広告など幅広い分野の意思決定を支援しています。
導入を検討する企業さまへ|LAPで“ジオフェンスの先”を可視化できます
オフェンシングは、指定エリアの入退場を捉えるための重要な技術ですが、実務で求められるのは「どんな人が、どこから、どの時間に、どれくらい訪れたのか」を正しく理解することです。
クロスロケーションズが提供する Location AI Platform®(LAP) や 人流アナリティクス® は、ジオフェンス検知を進化させた “実世界の人の流れや動きを可視化するプラットフォーム” として設計されています。
LAPでできること
- 来訪者数だけでなく、居住地・性年代・時間帯別の滞在傾向まで可視化
- 複数の店舗・施設を比較し、実勢商圏の広がりを把握
- 競合店の人流変化を踏まえた出店戦略立案
- イベントやキャンペーンによる来訪リフト率の検証
- インバウンド(訪日外国人)分析まで対応
さらに、煩雑な初期設定は不要で、店舗名や施設名を検索して登録するだけで、すぐに人流分析が始められます。
人流アナリティクス®
もっとシンプルに人流を把握したい企業向けに、
10 POIまでのスモールスタートができるクラウドサービスをご用意しています。
“はじめての人流分析”にも最適です。
Location Data Service(LDS)
レポート形式で人流データをご活用いただくことも可能です。
「まずは1地点だけ分析したい」「資料として比較検討したい」というニーズにも対応します。
人流データ活用のご相談
ジオフェンシングをはじめとした位置情報活用は、
小売、外食、観光、自治体、広告代理店など、さまざまな分野で意思決定の精度を高める手段として急速に広がっています。
「自社ではどのサービスが最適か知りたい」
「まずは1店舗だけ試したい」
「具体的な分析イメージを相談したい」
といったご相談もお気軽にお寄せください。
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