GLOSSARY 用語集

オルタナティブデータ

オルタナティブデータとは

「オルタナティブデータ」という言葉を聞いたことがありますか?これは、近年注目されているデータの一つで、従来の経済統計や財務情報などの伝統的なデータ以外から得られる情報のことを指します。では、オルタナティブデータとは一体何でしょうか?

INDEX

オルタナティブデータとは

オルタナティブデータは、銀行、金融サービス、保険(BFSI)業界や投資家が資産運用のために利用する経済統計や財務情報などの伝統的なデータ以外の情報源から生成されるデータの総称です。また、代替データや非伝統的データとも呼ばれ、最新のテクノロジーによって高頻度にデジタルで収集され、分析されることで得られます。

データの種類は様々で、スマートフォンの位置情報、クレジットカードの決済情報、POSデータ、SNS、気象情報、衛星画像、あるいは求人情報などが含まれ、ビッグデータ解析によって人々の行動や企業の業績予測に活用されています。これにより、従来のトラディショナルデータ(伝統的データ)と呼ばれるデータソースにはなかった新たな洞察が得られ、資産運用や意思決定のプロセスがさらに進化しています。

オルタナティブデータとトラディショナルデータの違い

それではオルタナティブデータ(Alternative Data)とトラディショナルデータ(Traditional Data)の違いや特徴について説明いたします。それぞれのデータの違いには情報の取得元や性質にあります。

オルタナティブデータとトラディショナルデータの比較
図. オルタナティブデータとトラディショナルデータの比較

トラディショナルデータ

トラディショナルデータ(Traditional Data)は、通常、過去の統計、財務情報、経済指標など、伝統的な手法で収集される構造化されたデータを指します。これらのデータは、企業の通常の運営活動や公的な機関によって一定のスケジュールで発表され、主に歴史的な視点から事象やトレンドを理解するために使用されてきました。

データの種類は、公的な機関や企業の報告、調査、統計から得られるもので企業の決算書や財務報告書などの財務データや人口統計や住居統計などの国勢調査データ、商業動態統計や販売データなどの商業統計データ、企業調査・消費者調査などの調査データが挙げられます。

また、トラディショナルデータは企業が発表する決算情報や公的機関が出す国勢調査、商業動態統計などの経済指標がありますが、これらのデータは一般的には調査や報告のプロセスを経て収集され、その後に処理されてから公表されることが一般的なので、情報がリアルタイムでなく、データの精度や頻度にも制約があります。

トラディショナルデータ(Traditional Data)

オルタナティブデータ

これに対してオルタナティブデータ(Alternative Data)は、従来の伝統的な手法ではなく、これまで利活用が行われていなかった新しい情報源やデータ収集手法を指します。データの種類はさまざまで、ソーシャルメディア上の反応や、センサーデータ、位置情報データ、オンライン取引データ、衛星画像などが含まれます。これらのデータはデジタルで生成され、高頻度に更新されるので、従来の伝統的なトラディショナルデータと比較した時に即座性や詳細性に優れている特徴があります。

これらの通り、トラディショナルデータは従来からのデータ収集手法の重要な要素であり、経済やビジネスの分析において基本的な情報源として使用されています。しかし、近年ではオルタナティブデータと組み合わせることで、より包括的な洞察が得られるようになり、その活用は進んでいます。

人流データにおけるオルタナティブデータの特徴

これまで説明してきたオルタナティブデータの中で主にクロスロケーションズが提供するオルタナティブデータは、位置情報を基に独自解析した人流統計データを即時に活用できるようにデータで提供しています。

位置情報を利用したオルタナティブデータの特徴は、分析したい特定地点の人の流れを素早くかつ解像度高く把握することができる点です。例えば、特定エリアに訪れた訪問者数を日ごと、時間帯ごとに把握できます。また、性別や年代、それらの人がどこから訪れているのかまでの情報を数値で把握できる仕組みが用意されています。それらのデータは毎日更新されるため、日々の変化を迅速に把握することが可能となります。

その他にもオルタナティブデータとしての人流データの特徴は、個別性・詳細性が挙げられます。つまり粒度の細かいデータを入手することができるということです。トラディショナルデータでは、データの分類が時間軸であれば月別、エリア軸であれば都道府県別、調査対象であれば企業別などとなりますが、オルタナティブデータでは、指定の時間、場所、店舗という細かさでデータを入手することも可能です。

Location AI Platformのデイリー来訪速報の画面
全国のホームセンターとコンビニのサンプリングした地点を日ごとの人流データで表示

オルタナティブデータのメリット

オルタナティブデータはトラディショナルデータと比べてどのような優位な点があるのでしょうか。
まずひとつ目は、デジタル化されているという点です。オルタナティブデータはひとつの現象についての結果(ただの1と0)ではなく、個々の記録が集まったビッグデータとして処理されています。また、それぞれのデータに複数の項目(ディメンション)が付与されていることも多く、解析の切り口も無数にあります。

データのデジタル化

クロスロケーションズが独自開発した分析エンジン“Location Engine™”からダイレクトにデータを連携

データがデジタル化され大量に扱うことができると、AIでの分析も可能になります。AIは過去の傾向から将来を予測したり、関連性を見つけたりすることが得意なため、ビッグデータから示唆に富むインサイトを提示してくれます。

オルタナティブデータの未来

オルタナティブデータは他のデータと掛け合わせることによって、より有効なデータになり得ます。クロスロケーションズでは、人流の予測モデルを開発しています。この開発では、日にちや曜日別に特定の場所・周辺の来訪数や気象情報(天気、最高気温、体感温度)、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況などさまざまな要因(説明変数)のデータを多数活用し他のデータと掛け合わせることで、予測の精度を上げるように取り組んでいます。この人流予測データを活用することで更なる活用が期待されています。

オルタナティブデータの活用

オルタナティブデータはこれまで日本に先駆け欧米のヘッジファンドやFintech業界で注目されてきました。特に2018年11月のウォール・ストリート・ジャーナル紙で掲載された、”テスラ社の工場の人流をスマートフォンの位置情報から解析して増産を予測し、その情報をヘッジファンドが数億円で購入した” という記事(参考1)が、世界中の投資家たちを驚かせたことは記憶に新しいところだと思います。

また、同じ頃から位置情報オルタナティブデータは不動産投資やREITにも活かせるということで、数々の分析や指標が公表されてきました。(参考2)

日本では2020年に流行した新型コロナウイルスの影響で、人々の生活様式がそれまでのものから急激に変化し、経済・社会情勢の先行きが不透明になる中、従来の統計調査ではないデータを見る動きが活発化してきました。日本銀行は2020年7月の展望レポートの中で”Google COVID-19 Community Mobility Reports”を引用し、家計調査との相関を示唆しています。(参考3)

オルタナティブデータの活用例

クロスロケーションズでは、人流データを活用したオルタナティブデータの特性を活かし、ホームセンターへの来訪数と商品販売額(経済産業省商業動態統計)と掛け合わせて見ることで、双方の相関が高いことを発見しました(相関係数は0.87)。特に来訪数の値は準リアルタイムで入手できるため、商品販売額の統計が出る前の業績予測の先行指標として利用できる可能性を示唆しています。

コロナ禍におけるホームセンター/スーパーマーケット店舗の人流分析と売上動向相関性についての調査レポート
ホームセンターの商品販売額と来訪数の推移

このように、日本でも徐々にオルタナティブデータの活用方法が検討される中、2021年5月にはデータ活用の健全なエコシステムを推進する目的で、一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会(参考4)が発足されました。クロスロケーションズも位置情報ビッグデータ分析企業として協議会の発足に際して最初に参加した企業となります。

いまやオルタナティブデータは金融業界だけにとらわれず、データの提供側・活用側、産業・学術問わず、さまざまなジャンルの企業・団体が会員となっており、今後オルタナティブデータの市場、そして活用の場が広がることが期待されます。

参考1:THE WALL STREET JOURNAL, Nov. 2, 2018
https://www.wsj.com/articles/your-smartphones-location-data-is-worth-big-money-to-wall-street-1541131260

参考2:Thasos Group, 2019 Retail REIT Performance Update
http://thasosgroup.com/insights/

参考3:日本銀行.“経済・物価情勢の展望”.2020年7月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007b.pdf

参考4:オルタナティブデータ推進協議会
https://alternativedata.or.jp/

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