人流分析の具体的な手法 | 業種別事例で見る人流データの活用術(基礎編)

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執筆者 片岡義明
人流分析の基礎知識。人流データを素早くグラフで可視化した業種ごとの活用事例を紹介

人々の移動や行動に関する情報を収集する位置情報ビッグデータを基にした人流分析は、店舗マーケティング、交通調査、都市計画などさまざまな分野で活用されています。

効果的な経営戦略を構築するための基礎情報として、店舗や施設の来訪者や滞在者の動向を素早く把握することが欠かせません。今回は、人流データ分析で具体的に何ができるのかについて、分析機能を通して基礎となる活用方法やその重要性について詳しく見ていきます。

INDEX

クロスロケーションズが提供する「Location AI Platform®(LAP)」は、スマートフォンから収集した位置情報ビッグデータを解析し、AIを活用した人流分析プラットフォームです。人流分析について、信頼性の高い解析を行うため、LAPを通して詳しく解説していきます。

人流分析を行う地点をピンポイントに設定

人流データを活用した分析が自由に行えるLAPの魅力の一つは、ピンポイントな地点での分析における偏りのない人流統計データを基に、リアルタイムに人の流れをグラフで可視化する機能が提供されていることです。

特定のキャリアや各種アプリによる偏りのある位置情報データを活用した人流分析の場合、以下図のように分析したい地点ではなく、広域なメッシュ単位(125m~1km)で人流分析を把握することになります。格子状に区切られた一定エリア単位の分析を行うメリットもありますが、店舗や施設など人が行きかうエリアで行う分析には不要なデータが含まれるため、登録した店舗や施設の中で取得できた位置情報を厳密に分析する人流データ分析をお勧めします。

一定のエリア単位でしか分析できないメッシュ型エリア
分析対象の施設の形を正確に登録できるピンポイント型エリア

以下に紹介します人流データを使った分析速報(モニタリング)機能では、これまで位置情報を基にした分析の経験がない方でも、人流分析が容易に行えます。地図から調べたい分析地点を指定することで、その地点に訪れた人々の移動や行動情報(推計した居住地、年齢、性別などを含む統計データ)を知ることができるようになります。

人流データ分析速報(モニタリング)の機能

人流データを利用することで、いつでも分析地点をモニタリングできる6種類の分析項目が用意されています。それではそれぞれの機能特徴を見ていきましょう。

[人流速報]デイリー来訪

登録した地点を訪れる人の数について、期間を設定することで日ごと(デイリー)の推移を折れ線グラフで表示します。毎日14時になると前日までのデータを算出して更新されます。休日と平日との比較やイベント開催日と通常日との比較、前年同時期との比較などを行うことで、キャンペーンの開催時期や商品・食材の仕入れ量の決定などに役立てることができます。

[人流速報]アワリー来訪

登録した地点を訪れる人の数について、期間を設定することで時間帯(アワリー)ごとの推移を折れ線グラフで表示します。時間帯ごとの人流を比較することにより、昼夜の人口比較や繁忙時間などを把握することが可能で、小売店や飲食店では店舗スタッフの人数調整にも活用できます。

[人流速報]アワリー滞在

登録した地点の滞在者数の時間帯ごとの推移を折れ線グラフで表示します。アワリー来訪では、その時間帯に登録地点へ初めて入った人のみをカウントしますが、アワリー滞在では、前の時間帯に登録地点に入って、そのまま滞在している人もカウントします。時間帯ごとにその場所に実際にいる人の数を把握できるため、出店候補地の店前交通量調査や、店舗や観光スポットの混雑度を調べる用途などに活用できます。

[人流速報]来訪数比較

登録した地点を訪れた人の期間中の延べ推計来訪数の合計をグラフで表示します。観光スポットの人気度を調べるのに役立つほか、駅やスタジアム、ミュージアムなど公共施設の利用者数を比較する用途にも活用できます。

人流データ機能説明_[人流速報]来訪数比較

[人流速報]デモグラ割合

デモグラ(デモグラフィック)は、年齢や性別、居住地域などの属性を意味します。デモグラ割合の分析機能は、登録した地点を訪れる来訪者の男女別や年代別の割合を棒グラフで表示して直観的に把握することができる機能です。これにより、店舗や観光スポットなどを訪れる人の属性を調べることで顧客層を把握するのに役立ちます。

[人流速報]来訪者距離圏別割合

登録した地点を訪れる人について、どれくらい離れた場所から来訪しているのか、その割合を棒グラフで確認することができます。グラフは、距離に応じて6つに色分けした分類(徒歩圏、自転車圏、鉄道圏、外来者など)で表示されます。店舗やショッピングモールの来訪者がどのエリアから訪れているかを把握することにより、ポスティング配布やDM送付のエリア選定などに役立てることができます。

業種ごとの具体的な人流データの活用事例

基本的な使い方は上記の通りですが、これらの機能を活用することにより、業種ごとに様々な活用が可能です。以下に、実際に行われたことがある分析の事例を紹介します。

(1)商業施設

出店候補地選定の際に、「デイリー速報」を活用して来訪者数の多い施設を選定するとともに、「デモグラ割合」を活用してターゲット顧客の多い施設を選定することで、ポテンシャルの高い場所に出店する判断材料に活用しました。また、「アワリー速報」で施設の曜日による来訪傾向や他施設との差を分析するとともに、既存店舗の強化時間帯の選定や従業員のシフト作成などにも活用しました。

さらに、自店舗と近隣の競合店をPOI登録して、販促施策の実施時に人流の変化を分析したところ、特売日にのみ集客が増加し、その後定着していないといった実態が判明したため、チラシの内容や特売日のスケジュールを調整しました。

人流分析_商業施設

(2)外食サービス

新たに外食サービスへ参入する企業が、レストランの新規出店候補地の立地条件を分析しました。候補地周辺の時間帯別の人流を「デイリー来訪」および「アワリー来訪」の機能を使って平日と休日それぞれ分析し、平日は夕方に人流が多く見られたのでディナー向けメニューを強化しました。一方、休日は午前中から人流が多く見られたのでランチやカフェメニューの開発に力を入れました。

外食サービスではアルバイトスタッフの人員確保が重要となりますが、ここでも人流データによる分析が役立ちます。「デモグラ割合」および「来訪者距離圏別割合」の機能を使って出店候補地を訪れる人の居住地や年齢を分析し、アルバイトの募集地域を決めて、付近の鉄道沿線向けに求人広告を出稿しました。さらに、平日は夕方の訪問傾向が強いため学生を中心に採用し、休日は午前中からの訪問が多いため主婦層を採用するなど、シフトの編成にも活用しました。

人流分析活用事例_外食サービス

(3)建設コンサルタント

水害が発生したエリアの避難場所をPOIとして登録し、災害が発生した年と翌年の人流を「アワリー来訪」を使って同週で比較しました。その結果、夕方から避難場所の来訪が増加し、一旦減少に転じた後に再度雨足が激しくなった頃に、再び来訪の増加を確認しました。これは、夕方に避難場所を確認し、後になって実際に避難に訪れた人が多かったと推測されます。

さらに「デモグラ割合」を確認すると、高齢者の割合が少ないことが判明し、若い世代に比べて高齢者が避難できていなかったことがわかりました。このことから、高齢者の避難場所への移動を促進させる方策が必要であると考えられます。

人流分析活用事例_建設コンサルタント

(4)公共施設・劇場設計計画コンサルタント

マーケティングや施設検討の情報源として人流データ分析の速報機能を活用しました。新たに建設した複合高層施設について、条件を設定してコロナ禍前後の来訪者数を「デイリー来訪」で比較したところ、コロナ禍が起きる前に比べて来訪者数が30%ほどに減少したことがわかりました。とくに1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4~5月については来訪者数が激減していました。

コロナ禍前後の比較とは別に、催事による人流の変動傾向についても「デイリー来訪」で検証しました。平日と休日それぞれについて、催事が行われた日と行われなかった人の差を比べたところ、平日は展示会による来場者の増加が多く見られる一方で、休日はショーによる来場者の増加が多く見られました。催事については、業種ごとの人流を比較することで、人を呼べる会場を探している業種へのアプローチが可能となります。

人流分析活用事例_公共施設・劇場設計計画コンサルタント

まとめ

LAPの人流分析の基本的機能となる人流速報を活用することで、小売店や外食サービス業などの企業は、より効果的な経営戦略を展開することができます。リアルタイムのデータをもとにした正確な分析は、新規出店の成功や競合店舗との差別化につながります。クロスロケーションズの人流データサービスを活用することで、失敗のない新規出店を実現しましょう。

この記事の続きや他のその他の分析機能について知りたい方は、以下サービスご覧ください。人流分析のデモやトライアルについてもご希望のエリアを基にご案内いたします。

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片岡 義明

専門新聞社や出版社勤務を経て、1999年よりフリーランスライターとして活動。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」が発売。インプレスより書籍「パソ鉄の旅~デジタル地図に残す自分だけの鉄道記~」、共著書「いちばんやさしい衛星データビジネスの教本」が発売。地図と位置情報を中心としたニュースサイト「GeoNews」主宰。

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