購買の多様化や少子高齢化時代の新たな商圏をAIが位置情報から推計
顧客ニーズや見込み客の居住地・行動傾向を位置情報解析から把握
株式会社小田急百貨店
小田急電鉄のグループ会社である小田急百貨店では、鉄道会社ならではの強固な顧客との関係をベースに、お客様情報(会員)情報を分析し、顧客のニーズにそったマーケティング活動を推進しています。
しかしながら、従来までは百貨店へ訪れる全ての来店客のうち、会員情報として分析できる対象は一部に止まり、多くの来店客のニーズ把握、情報提供方法に課題を抱えていました。
今回、小田急百貨店ではクロスロケーションズの Location AI Platform を導入、国内最大級のボリュームのロケーションデータから推計した実態に近しい、これまで知ることのできなかった百貨店へ訪れる全来館者の行動傾向・買い周り傾向の可視化を行い、お客様一人一人のニーズに合わせた最適な情報提供ができるよう宣伝・販促活動へと活用しています。
課題
小田急百貨店では1961年に創業以降、小田急電鉄のグループ会社として、当該沿線を中心に店舗を展開、近隣住民の方々だけでなく、鉄道利用者の方を中心に多くの方から利用されてきました。
ECの拡大に代表される購買の変化や若年層の百貨店離れなど、百貨店業界を取り巻く状況は大きく変わってきており、小田急百貨店でもお客様一人ひとりのニーズにあった情報提供の形を模索、以前より取り組んでいる新聞折込広告・交通広告・ダイレクトメールに加え、デジタル広告・SNSでの情報提供も積極的に取り組んでいます。
しかしながら、肝心の顧客像を理解するところに課題がありました。
小田急グループは、小田急ポイントカードという会員カードを発行しており、現在130万人以上の会員数を誇ります。こちらの会員データを分析し、顧客理解を深めていました。しかし、多くの会員の方々がいらっしゃるとはいえ、百貨店へ来店いただく方の一部にすぎず、カード会員以外の顧客像を理解するのに苦労していました。
導入の決め手
以前には、GIS(地理情報システム)と呼ばれるシステムを検討し、市場調査・顧客理解を深めようとしました。しかしながら、GISでは実際に店舗に訪れたことがある人をベースにした分析はできず、あくまでもエリアの居住者の傾向分析にとどまっていたため、リアルな消費者の行動傾向はデータから読み取ることができず、また、システム操作が難しく、利用者ごとのID単位の課金のため、部門全体や複数店舗で使う場合、高額となってしまい、我々が求める成果を出すことが難しいと感じていました。
一方、Location AI Platform は、膨大な位置情報ビッグデータから店舗利用客の買い回り傾向を解析できることに加え、過去のシーズンごとの人々の行動傾向の変化や移り変わりを把握できるので、昨対比較で今年の予測を立てたり、利用者にとって魅力的な施策立案に活用ができる期待が持てました。また、他の製品と比べ、UIが分かりやすく、スタッフの多くが使いやすそうな所にも惹かれました。
導入の効果
Location AI Platfrom を活用することで、これまで知ることのできなかった消費者の様々な行動傾向を把握することができるようになりました。
1.イベント毎のお客様の行動傾向
性別/年齢/時間/曜日別に、店舗へ訪れた人の居住地傾向を把握することができ、各イベント・催事期間に合わせて解析を行い、来店傾向を見極めました。
2.各店舗の実勢商圏とポテンシャルエリア
従来のGIS製品では、基本的には国勢調査などのデータの利用が前提となるため、実際にお店にきた人の分析というのはできませんでしたが、LAPは実際どのエリアから来店しているのか、リアルな実勢商圏がすぐに分かり、AI(人口知能)が今後も来店可能性の高いエリアも教えてくれました。
3.近隣オフィスビル勤務者の行動傾向
新宿店においては、近隣のオフィスビルへ勤めていると思われる人の行動傾向を分析し、人々の買い回り傾向を理解することで、自店舗の消費者の中での立ち位置を把握できました。
小田急百貨店では、バレンタインや北海道物産展など定期的に催しを行っており、期間中は特に沢山のお客様がご来館されます。ご来館されるお客様の中には、現状、催事期間中のみ店舗を利用されているお客様も多数いらっしゃいます。私たちは催事をきっかけとして、いつもご利用いただているお客様同様、催事期間だけご利用いただいているお客様にも、もっと私たちをご贔屓にしていただけるような品揃えやサービスを提供し、顧客満足度を更に高めていく取り組みを継続中です。
LAPを使用することで、イベントに実際きた人の居住エリアや買いまわり傾向や、よく利用される百貨店や人気スポットの把握を行うことができるため、お客様の潜在的な嗜好性やトレンドを魅力的な品添えやサービスに反映させていくことが可能であり、お客様にどのような情報提供をいつ・どこで行えばいいか考えるのに役立つと考えております。
将来の展望
今年のバレンタインイベントも約110のブランドの参加が決定しており、例年通り多くの女性客の来場が見込まれます。こちらのイベントへ参加いただいた方への再来店のアプローチとして、LAPのデータを活用したいと思っています。
また、エリアマーケティング全体を考える中で、折込広告の配布エリアを再考するのにも役立つと考えています。
今後は、会員データとロケーションデータの連携なども視野に入れながら、お客様それぞれのニーズに合わせた最適な情報・買い物体験の提供を実現して参りたいと思います。
株式会社小田急百貨店
http://www.odakyu-dept.co.jp小田急百貨店は、小田急電鉄(株)を中心とする小田急グループの一員です。
約100社から成る小田急グループは、運輸、流通、不動産、ホテル・レストランなど、さまざまな分野で地域社会に密着した事業を展開しています。小田急百貨店は小田急グループ経営理念に則り、お客さまとのすべての接点において感動を提供し、小売業の枠を超えた新たな価値を提供し続ける「感動創造企業」の実現に向け取り組んでいます。
- 業種小売・流通業
- 企業規模500~1000人