2020年12月28日
小売業界での位置情報データ活用について、小売業界に詳しい クロスロケーションズ株式会社 プロフェッショナルサービスディレクター 濱田知行さんにお話を伺いました!
秋山:
まずは濱田さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
濱田:
大学卒業後、サザビーリーグという会社に就職しました。アフタヌーンティールームをはじめとしたカフェ事業、リビング・バッグなど雑貨事業、アニエスべー・スターバックス・シェイクシャックなど海外企業の日本進出を支援し続けている会社です。
当時、僕は、素敵なカフェで儲かるビジネスモデルであること、そして素敵なことが日本中に広がればいい、さらに財を成した人が正しく評価される環境を広げていきたいと思い就職しました。
入社当初は、アフタヌーンティールームの接客・キッチンを経験、店長も勤めました。その後、本社勤務となり、経理や教育担当、経営企画、海外店舗立ち上げなど会社全体を見通せるような経験をさせてもらいました。
部門のほとんどを経験させてもらったおかげで、事業を成功させるために「どのように各部門を繋げたら良いのか」というノウハウも蓄積することがきました。
17年勤務していましたがその後転職し、広告代理店やコンサルタントとして50社の小売企業の支援をしてきました。
いろんな企業の方へお話を伺っていると取り扱っているものは違っても課題は似通っていることに気がつきました。
自社の現状・強みの棚卸し、どういうミッションでどういう方向に進むのか様々な部門で共通認識を持った上で取り組めているのかがとても重要で、その共通認識づくりにはGIS(地理情報システム、Geographic Information System)が最適だと実感するようになりました。
秋山:
GISをどのように活用していたのか教えていただけますか?
濱田:
はい、GISを使うと、どの要素が一番売り上げに効果をもたらしているのかが地図上に可視化されます。
商品企画部では、場所の属性を知ることで売れるものや売り方(デリバリーとか)を検討できるし、地域にあったMDになっているのかを再確認することができます。
販売促進部では、足元のエリアはポスティング・距離のあるエリアはデジタル広告というような戦略を考える際に、店舗開発部では他店舗と商圏がカニバラないように、データで見えるようになるので担当者育成も行え、個人への情報依存も少なくなります。声の大きい人の意見が通りやすいことってありますよね?GISで可視化することによってそれを防ぐことにもつながります。
一枚の地図の上で、現在自分たちが置かれている状況がどういう状況なのかを確認することで、部門をまたいで共通認識を持つことができます。それに、お客様の目線で全てを考えていけるようになるんですね、すると最適な答えが出てきて、企業の健全化にもつながりました。
ただ、たったひとつできないことがあって、それが競合分析だったんですね。お店舗では、夕方売り上げが上がらなくなってきた、週末売り上げが落ちてきた等いろんなことが起こるのですが、この要因を探し当てるのに、タイムリーに競合分析をすることが必要でした。
秋山:
最近は自社で管理する位置情報データだけでなく、ビッグデータとして解析されたものの利活用も増えてきていると思いますが、そちらに関してはいかがでしょうか?
濱田:
GISは良い点も多いものも運用上の課題もいくつかありました。例えば、システム自体が高額なことや国勢調査などの静的データの利用が主要でタイムリーな商圏変化・顧客の変化に気がつくことができませんでした。
昨今、ロケーションテックと呼ばれている位置情報ビッグデータの活用においては、タイムリーに分析結果を把握することができるため、地域の人の行動傾向が分かり、市場は急な変化においつけるようになってきたと思います。売れる商品以外が置かれてるのを、素早く判断できるようなデータです。
また、これまでできなかった他社の分析や他社との比較ができます。他社の成功ケース・失敗ケースを学び、自社の取り組みに活かすことができます。
ニュースをみるように、市場を把握できるようになったと言えると思います。データを見ることで、感覚的に状況が想像できるようになり、社内でもシナジーが起こしやすくなっているはずです。
加えて、データの変化からお客様をより身近に感じれるようになったのではないでしょうか。
秋山:
ありがとうございます。最後に小売業のマーケターに向けて一言お願いします!
濱田:
これからのマーケティングは4Eの時代だと思います。4Eとは、エクスペリエンス・エクスチェンジ(お客様が感じる値ごろ感)・エブリウェア/エブリタイム・エンゲージメントです。
お客様の満足発想から仮説立案することが大切です。仮説を実行した結果に一喜一憂せず、結果の再現性を持たせること、成功と失敗の理由づけができることが重要だと思います。
お客様に行動の背景には理由があります。その理由をお客様の立場で考え、何に価値を感じているのか導き出す必要があると思います。競合製品との比較だけではダメで、お客様に選ばれる理由を作ることが重要です。
このことをマーケターでなく経営層も顧客の立場で考えられていることも重要です。
上層部は“ブランドメッセージ”を作る、働く人たちが何のために取り組んでいるのか/何に貢献するのかがなければ、社員が自ら考えることができません。
中間層は、ブランドメッセージを事業に落とし込む、そして現場では、それを実現するために活動を行う。
役割ごとに活動は違えど、企業として一貫性を持ち、顧客に接していけば、信頼してファンになってくれるのではないかと思います。
秋山:
濱田さん、ありがとうございました!立場を問わず、顧客理解を深め、共通認識を持っていくことが重要だと言うことがよく分かりました!
◆ 今回のインタビュイー ◆
クロスロケーションズ株式会社 プロフェッショナルサービスディレクター
濱田 知行さん
株式会社サザビーリーグ、大手GISメーカーでのコンサルティングを経て現職。
スターバックスジャパンの元親会社で、ロンハーマンでおなじみのサザビーリーグではカフェ事業の事業戦略や海外事業のマネジメントを歴任。前職ではクライアントの保有データを生かし、店舗再配置から販促プロモーション、ビジネスモデルの最適化まで、部門最適を全体最適につなげる横断型組織プラットフォームの導入コンサルティングなどを行う。