アプリ開発において、位置情報を活用することは、現代の多くのビジネスで重要な役割を果たしています。地図表示やナビゲーション、広告配信、さらにはユーザーの移動解析まで、位置情報を基にした様々なサービスがアプリに組み込まれています。こうした高度な機能を効率的に開発するために利用されるのが「SDK(ソフトウェア開発キット)」です。
本記事では、SDKの概要を解説し、位置情報を収集するプロセスやプライバシー保護の重要性について説明します。さらに、収集された位置情報がどのように人流データに変換され、商圏分析や出店計画などのビジネスの場面で役立てられているかについて解説します。
SDKとは?アプリ開発を効率化する開発者向けのツールキット
SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)は、アプリケーション開発を効率化するためのツールキットです。これには、スマートフォンアプリなどの開発に必要なプログラムや技術文書、サンプルコード、補助ツールが含まれており、これらをパッケージとしてまとめたものがSDKです。これを使用することで、単体のソフトウェアをゼロから開発したり、別のプログラムに機能を連結・追加したりすることができます。
開発者はSDKを使って開発することにより、ゼロの状態からソースコードを書く必要がなく、手間を省いて簡単に必要な機能を実装することができます。
SDKとAPIの違い 混同されがちな用語

混同されがちな用語としてAPI(Application Programming Interface)があります。SDKがプログラムやサンプルコードなどをパッケージ化したものであるのに対して、APIは色々なウェブサービスやプログラムの橋渡しをするインターフェイスを意味します。どちらもソフトウェアやウェブサービスの開発においてプログラミングを省力化できる点は共通していますが、APIはあくまでもアプリケーションの機能を呼び出してプログラムと繋ぐものであり、SDKの中にはツールのひとつとしてAPIを含むものもあります。
SDKを利用することでAPIも含めた多彩な機能をアプリに組み込むことが可能となり、プログラムやAPIの互換性などを心配することなく開発を効率化することができます。
位置情報を活用したSDKの活用例
位置情報を活用したアプリの開発を支援するためのSDKには様々な種類があります。以下に代表的なものを紹介します。
地図/ナビゲーション
地図表示機能やルート検索、ナビゲーションなどの機能を提供します。一般ユーザー向けだけでなく、トラックドライバー向けのカーナビなど業務用アプリを開発するためのSDKもあります。
経路検索
鉄道やバスなどの公共交通機関の経路検索機能を追加するためのSDKで、移動の際に路線や時刻表などの情報を調べることができます。
動態管理
業務用の運行管理システムなどを開発するためのSDKで、車両の現在地をリアルタイムに監視し、走行履歴をもとに様々な経営判断に役立てることができます。
広告/クーポン配信
GPSやWi-Fi、ビーコンなどによって取得したユーザーの位置情報と、ジオフェンス(地図上に設置された仮想的な境界線)をもとに、ユーザーが特定の地域や店舗を訪れた際に広告やクーポンなどをプッシュ通知で配信します。多くのユーザーから取得した位置情報のログを保管することで販促や人流解析などに役立てることができます。
位置情報ゲーム
現実の地図を舞台にゲームで遊ぶ位置情報ゲームの開発を支援するSDKです。ゲームの世界観に合わせて地図デザインを柔軟にカスタマイズすることが可能です。
ライフログ
移動履歴を保存することで自分の行動を記録できる機能を提供します。一定時間ごとに位置情報を取得して記録するため、バッテリー消費が少ないように工夫されているものもあります。
AR(拡張現実)
スマートフォンが取得した位置情報に対して3D画像などを表示させることが可能で、観光アプリや防災アプリなどにAR機能を付加することができます。
これらのSDKは、ユーザーの位置情報をリアルタイムで取得し、様々なアプリケーションに活用することを容易にします。開発者はSDKを使うことで、手軽に高度な位置情報機能をアプリに組み込むことができます。
SDKによって収集される位置情報とプライバシー保護

位置情報を利用するアプリでは、ユーザーのプライバシーを保護することが最も重要です。SDKを通じて位置情報を収集する際には、ユーザーの同意を得た上でデータが取得され、収集されたデータは匿名化された後、集計・分析に使用されています。通常、アプリのインストール時やサービス利用時には、位置情報の取得に関する通知や許可を求め、ユーザーが同意した場合にのみデータを収集します。
クロスロケーションズの人流分析サービスでは、ユーザーのプライバシー保護を最優先に考え、収集された位置情報は厳重に匿名化されています。これにより、個々のユーザーが特定されることなく、収集されたデータは特定エリアの混雑状況や人流の動向を可視化するために活用されます。また、クロスロケーションズでは、公的統計データと組み合わせることで、より精度の高い人流データを提供し、商圏分析や出店計画などに役立てています。
一部の企業では、ユーザーの許諾を得た上で、自社アプリの最適化やファーストパーティーデータとしてユーザーの個人情報と紐づけた形で位置情報を利用する場合もあります。こうしたデータの利用については、どの範囲までの情報が取得・提供されるのか、また第三者へ提供される可能性がある場合には、その内容をユーザーに対して明確に説明することが非常に重要です。
アプリで収集された位置情報データをもとに人流データが生成されるプロセス
位置情報を活用するアプリは、ユーザーが移動する際に、スマートフォンのGPSやWi-Fiなどを通じて位置データを取得します。これらのデータは、SDK(ソフトウェア開発キット)を使用して収集され、開発者はこれをもとにアプリのさまざまな機能を提供しています。しかし、この生の位置情報データがそのまま人流データとして活用されるわけではありません。これらの位置情報データを独自に解析し、より広範なビジネスニーズに応えるための「人流データ」へと変換しています。
1.位置情報の収集:
スマートフォンアプリに組み込まれたSDKが、ユーザーの同意を得たうえでGPSデータやWi-Fi情報などを取得します。これにより、ユーザーがどのエリアに滞在しているか、移動しているかといった詳細なデータが記録されます。
2.データの匿名化
収集された位置情報データは、プライバシー保護のために匿名化され、個々のユーザーが特定されないように処理されます。この匿名化データがベースとなり、大規模な統計的処理を行う準備が整います。
3.データの集積と解析
匿名化された位置情報データ(広告ID、緯度・軽度、タイムスタンプ )は、複数のデータソースから集積され、クロスロケーションズの解析エンジンによって統合・解析されます。これにより、特定のエリアや時間帯における人々の移動パターンや滞在状況を視覚化し、ビジネスに役立つ「人流データ」が生成されます。
4.人流データへの変換
これらの位置情報は、単なる移動データとしてではなく、複数の時間帯や地域にわたる「人の流れ」を示すデータとしてまとめられます。特定のエリアでの人の滞在時間、混雑状況、流入・流出パターンなど、ビジネスやマーケティングのニーズに応じた詳細なデータへと変換されるのです。
クロスロケーションズが提供する「人流分析サービス」では、このように生成された人流データをもとに、店舗の集客状況や地域ごとの消費者行動を視覚化し、マーケティングや出店戦略に役立てることができます。たとえば、過去のデータと比較し、特定のエリアにおける来訪者の増減や時間帯ごとの動向を把握することが可能です。
まとめ

人流データを用いた分析を効果的に行うためには、その基となる位置情報がどのようなプロセスを経て収集され、どのように活用されているかをしっかり理解しておくことが重要です。正確な位置情報データの背景を知ることで、データに基づいた意思決定の信頼性が高まります。
クロスロケーションズは、特定のキャリアやスマートフォンアプリに依存せず、多様なデータソースを組み合わせた高精度な人流データを提供しています。これにより、商圏分析、出店計画、地域ごとのマーケティング施策など、各業界の幅広いニーズに対応する人流分析プラットフォーム「Location AI Platform(LAP)」や誰でも簡単に人流データを利用できる人流分析サービス「人流アナリティクス」を提供し、様々な企業や自治体の担当者がハンドリングでデータ分析を行うことができるようにデータに基づいた的確な意思決定をサポートしています。
人流データを活用してビジネスの競争力を高めたい方は、ぜひサービスページから詳細をご確認ください。