~規模の縮小や通路規制により、例年と異なる大型イベントの人流はどのように変化したのか~
北海道の冬の大型イベント「第73回 さっぽろ雪まつり2023」は、約175万人の来場者が訪れたことがニュースでも話題となった大きなイベントとなりました。新型コロナの影響から2022年、2021年のイベントが中止となったことにより、3年ぶりとなった2023年は、多くの観光客が会場に訪れたようです。一方、例年とは異なり飲食ブースの設置、巨大滑り台やチューブスライダーで人気の「つどーむ会場」の開催が中止となったことで、これまでとは異なる形でイベントが開催されました。
人流データは、このような観光地でのイベントやまちづくりの分野においても、従来は把握できなかった観光客の動線や変化、そして、隠れたニーズを分析するために活用が期待されています。その活用は、観光地でのイベント会場を分析の対象とすることで、その場に訪れた来場者の動向を把握することができます。これまで把握し難かった動向を知ることは、自治体や観光業に携わる方において、未来の観光地におけるプロモーションやPR戦略に役立てることができます。
本記事では、3年ぶりに開催されたさっぽろ雪まつりを事例に、来場者数の把握だけでなく、イベントが行われた2会場の時間帯における滞在人口の推移、過去のイベント来場者と比べた変化、来場者の動向に焦点を当てた人流調査を紹介します。
■さっぽろ雪まつりの人流調査概要
「さっぽろ雪まつり2023」が行われた2つのイベント会場における人流の変化を2019年、2020年と比較分析。
■人流分析の対象期間
・2019年:2019年2月4日(月)~ 2019年2月11日(月・祝)
・2020年:2020年2月4日(火)~ 2020年2月11日(火・祝)
・2023年:2023年2月4日(土)〜 2023月2月11日(土・祝)
大通公園会場 時間帯別滞在人口データ(0時~23時台)
■人流分析の対象エリア:①大通会場
大通会場は、札幌の中心部に位置しています。対象エリアは大通西1丁目から大通西10丁目にわたります。
■人流分析の対象エリア:②すすきの会場
すすきの会場は、「氷を楽しむ」がテーマの氷像がメインの会場で、地下鉄すすきの駅を出てすぐのエリアになります。
来場者の時間帯別における滞在人口から見る例年との人流変化
2023年、2020年(前回)、2019年(コロナ禍前)の滞在人口をそれぞれ比較
イベント会場 | ①大通会場 | ②すすきの会場 |
2023/2020年比 | 109.6% | 122% |
2023/2019年比 | 79.6% | 126.8% |
イベント会場の分析結果より、メイン会場の「①大通会場」では、2019年と比べて約80%の人出が戻っています。前回2020年のイベントと比較すると、会場エリア内での滞在人口は約10%増えていることが分かりました。
また、人流データの活用は、来場者全体の増減を知るだけでなく、角度を変えて分析を行うことでそれらの要因が何にあったのかを調べることにも役立てることができます。特にイベントの分析においては、イベント全体の情報を把握することでよりその変化についての理解を深めることができるようになります。
さっぽろ雪まつり2023においては、2023年のイベントより混雑を防止するために、過去のイベントとは異なり、通路を一方通行にする規制が行われておりました。他にも、過去のイベントで実施されていた「つどーむ会場」の開催が見送られたことにより、来場者の人出が2会場に集まったことによる影響から、これまでと異なる変化が数値にも出ています。分析結果より、「①すすきの会場」では、2020年、2019年と比べると時間帯別の滞在人口は20%以上も増えたことが分かりました。
■大通会場の来場者滞在時間
■すすきの会場の来場者滞在時間
イベント会場それぞれを分けて2023年、2019年の時間帯別滞在人口データで比較すると、各年の最も多くの人が滞在した時間帯の変化が見えてきます。「①大通会場エリア」の人流では、2019年では18時を境に滞在人口が減少しており、2023年は17時を境に滞在人口が減少傾向になりました。一方、「②すすきの会場エリア」では、2023年の滞在人口が以前のイベント会場の来場者よりも早い20時以降に滞在人口が減少傾向したことが分かりました。
人流データを活用することで、これまで見えなかった人出の変化をデータを基にして把握することができるようになります。この分析結果で得られるデータは、今後の都市計画やイベントなどの企画を立てる際には、重要な情報として役立ちます。
イベント会場(大通会場)の来訪者居住エリアを把握
人流データを活用したイベント分析には他にも来場者情報を把握することが求められます。来訪者の性別や年代情報を調査することや来場者がどのくらい離れた距離から来場しているかを把握することができます。ここでは、メイン会場の大通会場を題材に2023年、2019年の来場者を比較してどのような変化が起こったのかを見てみます。
分析結果から、2023年は2019年と比べて大通会場では外来圏(会場から20km以上)からの来場者が大きく増えたことが分かりました。来場者がどのくらい離れた距離から訪れているのかを把握することで今後のイベントの期待値や次回のプロモーション施策としてエリア選定に役立てることができます。
また、イベント来場者が期間中、どのような近隣施設や店舗に立ち寄ったかを把握することはまちづくりにおける観光戦略としても重要な情報となります。以下では来場者の位置情報が近隣施設のどのような場所と併用しているかを基に来場者が立ち寄った店舗・施設を見ていきます。
イベント会場(大通会場)に来場した観光客の動向分析
来場者の動向を把握することは、今後の観光戦略において観光客の滞在時間を長くするための施策に役立てり事ができます。より魅力的な店舗・施設への導線を最適化するだけでなく、まちづくりにおける課題(立ち寄るエリアと立ち寄らないエリアを数値として見える化)を発見することができます。
こちらでは、2023年の大通会場をピックアップして、来場者がその他の周辺施設のどのあたりを訪れているかをランキング形式で分析しています。
分析結果の特徴から、近隣の「サッポロファクトリー」に来場者の多くが訪れていることが把握することができます。また、その他の年代や別のエリアなどを分析する際には対象エリアや期間を変更することでそれぞれの細かな分析を簡単に行うことができます。
おわりに
第73回さっぽろ雪まつり2023のイベント分析では、代表的な人流分析機能を利用し、その結果をご紹介いたしました。今回ご紹介した結果は、分析したいエリアとその期間を設定するだけで、すぐに「人流アナリティクスツーリズム」のアカウントを登録いただくことで調べていただくことが可能です。
雪まつりのような大規模なイベントからピンポイントな地方のお祭りまで人の流れや動きを調査するのに費用や時間も大きくかけずに調査することができるようになりました。これらは、人流アナリティクスを利用することでだれでもかんたんに分析していただくことができます。
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