人流データを活用した屋外広告の視聴者データ解析
駅前など人が多く行き交う場所に設置される屋外広告(OOH/DOOH)は広告の中でも長い歴史を持ち、不特定多数の目に留まりやすい広告として利用されてきました。近年ではデジタルサイネージを使って動画や音声を流したり、立体映像を使ったりと様々な表現が用いられており、コロナ禍の2021年7月には新宿東口に突然現れた巨大な三毛猫「新宿東口の猫」の3D映像の広告が話題となり多くの人がSNSで投稿して話題となりました。
屋外広告はインターネット広告が普及した今でも、依然として費用対効果が高い広告として人気がありますが、通勤・通学などで長期にわたって多くの人々に訴えかけることができる反面、広告を設置する場所選びを間違うと、期待通りの効果が見込めないというリスクもあります。
そこで近年利用されているのが、人流データを活用した屋外広告の視聴者を定量的に計測する効果測定です。これらは位置情報ビッグデータを活用することで、これまでは数値化するのが難しかった屋外広告の効果を定量的に計測・可視化することが可能となったことにより、媒体接触者の生活動線の把握やサーキュレーション(広告媒体の普及度合い)の最大化に役立てることができます。

屋外広告の視認エリア内の人流を分析
人流データを活用することにより、対象となる屋外広告がある施設やビル前や鉄道、道路など屋外広告の視認エリアを自由に設定し、そのエリア内の人流を調査することで視聴エリアに訪れた人数・時間帯・性別・年代・接触回数・来訪者居住エリアまでをリアルタイムに可視化することができます。

たとえば2021年7月に「新宿東口の猫」が現れたときに、クロスロケーションズはこの屋外広告を見に来訪した人の人流変化について分析結果を発表しました。位置情報ビッグデータ活用プラットフォーム「Location AI Platform(LAP)」を使って「新宿東口の猫」を見られるエリアを指定し、来訪者数の推移を調べたところ、広告のテスト放送が開始されてから映像が本格運用されるまでにかけて来訪者数が増えていることが確認されました。

屋外広告の効果測定は、これまで国勢調査やパーソントリップ調査、駅の乗降者数などの統計情報をもとに効果を推測する方法や、手計測による交通量調査やアンケートなどを使用する方法がありましたが、統計情報はコロナショックなど急激な社会変動に対応することができません。また、交通量調査やアンケートなども手間とコストがかかるというデメリットがあります。
ほかにもカメラやWi-Fiなどの機器を現地に設置して計測する方法がありますが、調査のたびに機材を設置するのはコストがかかる上に、計測できる範囲も限られてしまいます。また、インターネット広告が普及したことにより、近年は広告主が非デジタル媒体に対しても、デジタル媒体と同様に効果の数値化を求める傾向があります。
そのような時代のニーズに応えたのがスマホアプリから取得される膨大な位置情報をもとに解析した人流データの活用です。位置情報を解析することで、広範囲にわたってどのエリアにどれくらいの人の流れがあるのかを正確に把握することが可能となり、それをもとに屋外広告の視聴者測定とその効果を説得力のある形で提示することができるようになりました。
屋外広告接触者の居住エリアや行動傾向を把握
人流データの活用により、屋外広告周辺の人の流れを調べられるだけでなく、媒体接触者の居住エリアや行動傾向を把握することも可能となります。たとえば「渋谷の屋外広告を見た人は、池袋の屋外広告にも接触する可能性が高い」といった傾向もわかるようになるため、この分析結果をもとに両エリアで同じ訴求を行うなど、これまでは難しかった効果的な広告展開を行うことができます。
人流データを活用した屋外広告の分析は、速報性が高いことや、媒体接触者の性別や年代を把握できることなども特徴で、時間帯別・日別・週別に接触者の動向を把握し、性別や年代にあわせて広告の内容を変更するなど様々な手を打つことができます。


例えば、前述した「新宿東口の猫」に関する分析において、このエリアを訪れたデモグラフィック(属性)について調べたところ、来訪者の割合は20代が29.2%であるのに対して、同じ期間に新宿南口に訪れた20代は17%という結果になりました。これにより、新宿駅南口に比べて東口のほうが20代の比率が高いことがわかり、広告内容を検討する上で参考にすることができます。
ほかにも、DOOH(デジタル屋外広告)とスマホの位置情報広告を組み合わせるこで屋外広告エリアと連動して周辺エリアにいる人をターゲットにしたリアルタイム広告を配信したり、過去に屋外広告に接触した履歴データを元に広告の配信対象者を絞り込むヒストリカルターゲティングなどの広告配信を行うことが可能です。
デジタルツインとの組み合わせにより最適な広告位置を検討
人流データを活用した屋外広告の効果測定やデジタル広告施策が普及する中、最近ではデジタルツインと人流データを組み合わせることで、より効果的な広告掲載場所を探す取り組みも行われています。
デジタルツインとは、現実世界をデジタル空間上に再現してモニタリングやシミュレーションなどを行う技術のことで、これを都市レベルで行うことにより、さまざまな課題解決を図る取り組みが進んでいます。国土交通省が推進する「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」では、デジタルツインの基盤となる3D都市モデルデータの整備およびオープンデータ化に取り組んでいます。
PLATEAUの3D都市モデルデータを使ってビルなどに設置された屋外広告の視認エリアをシミュレーションし、人流データと組み合わせることで、視認エリア内を通過するユーザーの特性を分析して最適な広告配置の検討に役立てるユースケースも登場しています。
また、最近では鉄道やバス、タクシーなど公共交通機関のラッピング広告や、自家用車にステッカーを貼るマイカー広告なども盛んになっており、今後はこのような移動体による広告の効果測定にも人流データの活用が進むことが予想されます。
まとめ
街に人の波が戻り活気を取り戻したことで屋外広告は、新しいデジタル技術と創造的なコンテンツで再び注目を浴びています。しかし、広告の場所選びと効果測定はますます複雑化しています。そのような中、位置情報ビッグデータが登場し、屋外広告の視聴者データ解析に大きな変化をもたらしました。
この技術を用いることで、屋外広告の視認エリア内の人流を詳細に分析し、視聴者の人数、時間帯、性別、年代、接触回数、来訪者の居住エリアまでをリアルタイムに可視化することができるようになりました。これにより、広告のターゲット設定と効果測定が可能になり、広告主は広告戦略を改善し、費用対効果を向上させることができるようになります。
また、この技術により屋外広告接触者がどこのエリア来ている人が多いのかなど媒体接触者の居住エリアを把握したり、その行動傾向を把握することで、屋外広告において視聴者データを元にしたキャンペーン企画を実施することができるようになりました。

人流データを活用した屋外広告の視聴者データ解析は、広告業界に新たな可能性をもたらし、効果測定をより迅速かつ正確に行えるようになりました。また、同時に周辺エリアの人に広告を配信するジオターゲティング広告との連動など、この分野の発展は今後も進むことが期待されています。
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